初夏。
目が覚めると抜けるような空だった。
樹と一緒に、近くの一宮川に散歩に出掛けた。
こんな道が、川沿いにずっと続いている。
樹は最近、自転車デビューを果たした。
車が通らない道は、練習にはうってつけ。
田んぼ沿いの道を走る。
田植えも終わり、満々と水をたたえている。
独特のにおいが風に乗って通る。
用水路。
小さくて写真では見えないが、メダカやアメンボがいる。
僕の育った佐賀は、クリークという水路が編み目のように張り巡らされていて、
この季節になると水路はたっぷりの水が流れ、そこでさまざまな生き物を捕まえた。
見慣れた風景のはずだったが、こうやって改めて眺めるのは30年ぶりくらいじゃないかな。
なんだか、なつかしかった。
のたのたと、樹の自転車のスピードに合わせて歩いていると、
途中、農作業をしているおばあさんがトマトをくれた。
「小さくて出荷できないから」と言いながらくれたそのトマトは、
味が凝縮されていて、ものすごくうまかった。
樹もまるかじり。