3年ぶりに、東京R不動産の本を書いた。
前の本の続編のようでもあるが、内容はずいぶん違う。
東京R不動産が始まって、7年が経とうとしている。
最初はボロ物件ばかりを集めたマニアックなサイトだったが、それが魅力的なのに眠っている空間を発見するエンジンへと、いつのまにかに進化したような気がする。
最初は、わけもわからず、まるで宝探しのような感覚で東京を駆け回っていた。
やがて東京以外のエリアで、僕らと似たような感性を持った人々と出会った。房総もそうやって始まった。東京から微妙な距離の、特異なサイト。
金沢、福岡、房総、稲村ヶ崎、そして山形。「なぜ、そのエリアなのか?」と聞かれるが、別に戦略的な意味があるわけではなく、そこに魅力的な人と物件があったから、それだけ。
2010年2月現在、東京R不動産は月間ページビュー約300万、メールマガジンの会員約3万人、グーグルで「不動産」と検索すると重要単語10個のなかに入っている。ニッチだと思っていた領域は、案外そうではなかったのかもしれない。
空間を自分たちで選び、つくり、使い、楽しむという行為は、本来、自由で根源的なものだったはず。しかし既存の不動産業界は妙にシステム化され、資本の論理でつくられていた。物件はスペックのみで語られ、流れる空気や気持ちよさは二の次に追いやられてしまっていた。僕ら、R不動産のメンバーは、そこに抱いていた違和感を解消すべく空間を探し、サイトにアップし、みなさんに届けた。年賀状などで「いい部屋に住んでいます、ありがとう」という声が伝わってくると、本当にうれしい。
続けていると、さまざまな問題に当たり、相談も受けるようになった。
ライト・リノベーション・サービスや物件再生プロデュースなどは、現実のニーズから生まれた新しい動きだ。
僕が求める究極は、自分たちが本当に住みたい、働きたい空間を、自分たちで能動的につくれる環境。そのためには物件を探すだけではなく、いくつか整えるべきサービスやシステムがあるのもわかってきた。R不動産の次なる挑戦は、どうもそのあたりにありそうだ。
この本を改めて眺めてみると、読者の空間を楽しむスキルや感性が、ものすごい勢いでアップしているのを実感する。久しぶりに仲介した物件に取材でお邪魔させてもらうと、見違えるように空間が変わっている。使い込まれたそれらの物件は多様な魅力を放ち、生き生きしたシーンが広がっていた。忙しいなか、この本の取材に協力してくださったみなさんに、この場を借りて感謝を伝えたい。ありがとうございます。
本当に住みたい空間に出会えるために、R不動産はこれからも、都市を走り続けます。
房総R不動産も載ってます。