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2008.4.8

妻の変化

馬場正尊
 

この頃、小さいが影響の大きな変化が我が家に訪れていた。妻の変化だ。
最初、この脱・東京計画になど、妻が耳を貸すとは思ってなかった。僕は今まで何度も、僕の気まぐれで彼女を振り回した。「あなたの暴走にはついていけない・・・」と、数年前には家を出て行かれたことさえある。しかも今回は「房総」、響きも悪い。共感が得られるはずはないと思っていた。しかし、ある日、リビングのテーブルの上に数冊の本が置いてあった。

別に僕は定年するわけでもないし、田舎暮らしをしようと思っているわけでもない。
房総と都心の二拠点居住の実験をしようと思ってるだけなのだが・・・
僕がにわかに房総通いを始めていること、最初は仕事だと言っていたが、ミイラとりがミイラになり始めていることなど、彼女にはまるっとお見通しだったようだ。しかし、こんな本が置いてあるということは、妻は案外、乗り気なのではないか。

僕が密かに申し込んだネット審査の書類も、実は既に彼女も見ていた。恐ろしいことではあるが・・・。
僕がショックを受けているのと違う視点で、彼女は怒っていた。
「なぜこんなにあっさりネット審査に落ちるのか? 銀行ってとこは、一体、どうなっているのか? なぜこんない得体の知れない紙一枚の返事なのか?」
僕は比較的適当な性格なのだが、彼女はこういう面では探究心旺盛である。どうやら僕以上にその謎が知りたくて仕方なかったようだ。
いくら効率の悪い設計稼業だとしても夫は今や30歳後半、それなりの稼ぎもある(と、少なくとも思っていた)。Open A (僕の会社)も設立して3年以上経過しているので基本的な用件はクリアしているはずだ。にもかかわらずネット審査は一発NG。かつて企業で総務をしていた経験もある彼女は、少なくとも僕よりも銀行とのつき合い方は慣れている。
房総に住んでみる、というメインコンセプトからは、ちょっと外れた観点ではあるが、とにかく彼女は「我が家はいくら住宅ローンが借りれる資格があるのか?」という部分で妙な盛り上がりを見せている。それはそれで興味深い。

どこの家庭もそうかもしれないが、いざという時の行動力は、いつもはじっとしている妻のほうが早く、そして力強かったりする。彼女はいきなり、馬場家が成立したときからの一貫したメインバンク、M銀行の某支店に相談に行くことにしたようだ。かれこれ20年近くお世話になっている銀行である。家賃の振込も、光熱費の振込も、子どもの教育費の振込も、すべてこの銀行を介しているのでさすがに少しは親身になってくれるのでは? そう期待した。

僕と妻は房総そっちのけで、「対、銀行」という側面で団結した。

本論からは確実に外れているが、まあこの際いいや。

僕らは本丸であるM銀行に乗り込んで行った。

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このブログについて

東京R不動産のディレクターでもある馬場正尊が、ふとしたきっかけから房総に土地を買い、家を建て、生活を始めるまでのストーリー。資金調達から家の設計、周辺の環境や人々との交流、サーフィンの上達? まで。彼の人生は些細な気づきから、大きくそれていくことになる。馬場家の東京都心と房総海辺の二拠点生活はこうして始まった。
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