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2008.5.27

フラット35のなぞ

馬場正尊
 

「フラット35」を知っているだろうか?
住宅ローンについて調べてみたことのある方は、まず最初に当たる。

35年間、金利が変わらないもっとも安定し、だから人気のある住宅ローン。
住宅メーカーの建売住宅を買う人の多くがこれを利用する、もっともポピュラーな制度だ。
馬場家でも、「35年」というはるか彼方のような返済期間におののきながら、やはり金利が一定(すなわち、支払いが一定)の安心感に惹かれ、まずそれを申し込もうと思って調べ始めた。

がしかし、ここでも馬場家はつまずくことになる。

今の設計では、デザインや住宅性能としてフラット35の要件を満たさないのだ。
問題なのは、住宅金融支援機構が定める「独立行政法人住宅金融支援機構住宅技術基準規定」(名前が長い!)。
そのなかに、優良住宅技術基準なるものがあり、それを満たしていなければ、このローンの対象にならない。
例えば、断熱性能が一定以上な床、壁、天井でなければならない・・・という規定。
房総の馬場家は、周りの緑が借景で欲しいし、風通しもよく光がいっぱいにしようと思っているのでガラス比率が高い。引き替えに断熱性能は犠牲になっている。もちろん、基準を満たすはずもない。そもそもコンセプトが違うのだ。
いいじゃないか、親自然的で開放的な家でも。生活のために何を選択するかは、住む方の自由なのでは?

規定を読みながら腹が立ち始めているときに、さらに追い打ちをかけるように新たな条文が。
気に障ることに住宅金融支援機構が指定する設計事務所が、対象となる住宅が基準を満たしているか審査に来る、というのだ。
で、そいつはどこの誰なんだ!?
住宅金融支援機構は名前と反して、まったく支援してくれない・・・。

見ていて思ったのだが、例えば『新建築』や『住宅特集』に掲載されている住宅で、このフラット35の要件を満たす家はないだろう。
というか、住宅メーカーの商品化住宅しか無理なのではないか? という気さえしてくる。
住宅のデザインには、もっと多様性を認めて欲しい。

詳しくは、住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)のフラット35のサイトを参照。
設計者の方は気をつけて、腹立ってきますから。
http://www.flat35.com/
まあ、普通の家族は建築家になんて設計を頼むなかれ、という国からのメッセージなのだろうか?

「住む」という行為は、ただ快適に食べて寝るだけではなく、文化や表現の一部であるということ。
そして「家」は、物体としてのストックではなく、人間が人生を生きるための舞台でもあることを、金融の面からも、政策の面からも理解して欲しい、と強く望みながら他の住宅ローンを検索するのであった。

ちなみに、房総の馬場家のプランはこれ。

まあ、フラット35は無理だよな、どう見ても。

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このブログについて

東京R不動産のディレクターでもある馬場正尊が、ふとしたきっかけから房総に土地を買い、家を建て、生活を始めるまでのストーリー。資金調達から家の設計、周辺の環境や人々との交流、サーフィンの上達? まで。彼の人生は些細な気づきから、大きくそれていくことになる。馬場家の東京都心と房総海辺の二拠点生活はこうして始まった。
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