海沿いの朝。
晴れやかな空で1日がはじまる。
海風が運んできた潮の香りと天窓から注がれる、柔らかながらも
キラキラと眩しい朝陽をかすかに感じながら目を覚ます。
洗面所の上の、こだわりの横長に伸びた窓から空の様子を眺め
ながら顔を洗ってリビングへと降りていく。
奥の方で愛犬が尻尾を振っている。いまや遅しと私が現れるのを
待っていたようだ、早く外に出たいと。
我が家での毎朝のルーティン、海岸沿いを愛犬とランニング。
南北に延びた海岸線、この日はリモートワークなので北を選び
幕張の浜へと向かって走り出す。
すれ違い様の挨拶も恒例で顔見知りもすっかり増えてきた。
遥か向こうのスカイツリーを目印に、ベイタウンの街並みを横目に
検見川の浜〜幕張の浜と走りを進めマリンスタジアムで折り返す。
往復で8kmほど、およそ1時間かけ心地よい汗を流す。
家に戻りシャワーを浴びると妻が朝食の準備をしてくれている。
香ばしい、たくさんの食材の香りでちょうどいい空腹感が刺激される。
リビングの白い床は陽の光が射し込み光輝く。毎日の朝食もこれにより
特別感のあるものになり、このリビングの醍醐味のひとつへと。
たっぷりと時間をかけ、会話を楽しみながらご馳走さま。
愛犬はサービスルームが大好きな様子。たらふく食べたのか、とても
気持ちよさそうに寝そべっている。
私はこのままリビングに残り、リモートワークの準備を始める。
妻は幕張へ、愛車で買い物ランチへと出掛けていった。
買い物では不便を感じないこのエリア、車で10分ほど走れば
大型ショッピングモールや超人気のホールセール店、アウトレットも
充実している。個性的な店舗も点在しており、近くにあるオーガニック
スーパーは妻も私もお気に入りで食材のほとんどはここで仕入れる程。
リモートワークの日の私は、大半をこのリビングで過ごしている。
大好きな空間の中で、お陰さまで仕事は捗っている。いわゆる住宅地の
中に居ながらもこの静けさにはいつも感動すら覚える。
ひと息入れに2階のバルコニーへ。こだわりの豆で淹れた珈琲を片手に
青空の中を通り過ぎていく飛行機を眺める。
明日からは海外へと出張のため、この後荷造りもしなければならない。
最寄りの駅からは成田や羽田へと直通の高速バスも発着するので
キャリーケースをガラガラと引いて移動、あるいは駐車場が満車になる
心配をするような、空港へ向かう時の煩わしさとは無縁となった。
まるで額縁のような、家の窓から陽の傾きを感じる。そろそろ夕暮れ
が近づいてきているようだ。
このエリアは黄昏時からが本領発揮な気がする。
買い物から笑顔で戻ってきた妻と、もちろん尻尾フリフリな愛犬と
一緒に海辺へと散歩に向かう。朝とは違う、南のいなげの浜を目指す。
公園内にはシェアサイクルスポットが点在、青松白砂の長く延びた
海岸線を、風を感じながら走るのもとても心地がいい。
水平線がだんだんと暗くなってくるのと引き換えに、くっきりと
映え始める富士のシルエット。海へ延びるウッドデッキに着いて
海の上から日が暮れる様子をずっと眺めていた。
家に戻ると少し冷えを感じたのでペレットストーブに火を入れる。
じんわりと柔らかな、暖かい空気がリビングを包んできた。
妻お手製の、大好物なおつまみの数々を、炎の揺らぎを眺めながら
お気に入りのお酒とともに愉しむ。この日のエピソードや明日から
の出張の話など、ほろ酔いになりながら夜が更けてゆく。
就寝に向かう階段を上がる踊り場あたり、額縁のような窓からは
無数の星が散りばめられていた。
どこかで「海」を感じながら、暮らす日々。
充分に楽しませてもらった、この家を離れるのはとても惜しい。
次なる主人に物語の続きを綴ってもらおう、どんなセレナーデに
なるのだろう。