様々な物件をご紹介してきて常々思うのが「家は住んでこそ輝きを放つ」ということ。
先代から受け継いできた物件を可能な限り維持していても様々な理由によってそれが出来なくなり、やがて空き家となってそのまま時を経ればたとえ魅力的な物件であっても廃れていってしまう。
本当にもったいない話です。
1軒でも多くそのような物件を新たな家主さんへと繋いでいき、再び輝きを放つための一助になっていきたい、そんな思いです。
今回も素敵なご縁をいただいた1軒をご紹介。
この物件があるのは市原市の北部。中心地からは車で10分ほど走った、田園風景が広がる長閑なエリアにあります。
主要な駅や高速入口、ショッピングモール、自然溢れる公園など、ほとんどが10分圏内。ある意味田舎に居ながらも利便性は抜群な場所かも知れません。
すぐ近くには大きなダムがありちょうど良い散歩コースになりそう。このダムのほとりには自然遊園地「こどもの国」があります。千葉県民の方々なら小学校の校外学習で訪れた、懐かしの場所かも??
ちなみに鉄道の最寄りは難読漢字の「海士有木駅」。
これ、読めますか??
ちなみに正解は「あまありき」と読みます。諸説ありますが昔、漁師の集落であった「海士(あま)」と近くにあった城の名前「有木(ありき)」が合わさったとも言われています。
駅舎も走る電車も懐かしい感じでよくテレビでも見かけます。
物件のあるエリアは遠くを眺めると抜け感のある風景がとても印象的。高く遮られる建物があまりなく、遥か向こうに富士山を崇めることもしばしば。特に冬場の空気の乾いた日にはオススメです!
さて、物件の話へ。
600坪を超える敷地には6つの和室と土間、水回りで構成された母屋に存在感のある蔵、そしてかわいい小屋があります。
植栽も多く、昔は物件の奥(山側)に池もあったとの事。
母屋は詳細築年数は不明なのですが、ご近所さまの話によると大正時代に同じ市原市内から移築によってこの場所に建てられたとの事。屋根周りなどを見ると神社仏閣でも見られそうな、見事な装飾が現存。
この物件、大戸口(今で言うメイン玄関)が特に印象的。
小上がりになった入口を見て「開け放って舞台として何かやったらきっと素敵ですね!」と思わず。
隣にある厩口から普段は出入りすることになりそうですが、ここには程よくエイジングされたかわいい建具がまだまだ現役で残っています。この建具のある場所が面白い造りとなっているので、ぜひうまく活用していきたいところ。あ、詳しくは現地で確認してくださいね(笑)
和室にはこれまでの時代を見守ってきた家具や調度品の数々があり、まるでタイムスリップしたような感覚となります。まだまだ現役で使えるものも多く、こちらも必要に応じて引き継いでいけます。
およそL字で囲まれた土間スペースの奥に台所・浴室があり、反対側奥にトイレが配置。建物奥側(北側)は通路で繋がっています。(現在は使わない建具等が置かれていて塞がれていますが)設備的にはどれも古さは否めないので、ここは現代的なものを取り入れ建物と馴染むデザインにしたい。
古民家タイプの空き家でよくあるのが雨戸が開かない事。ちょっとしたコツが要る場合もあるようですが、多くは長年使われていない事が原因。ただこの物件についてはその心配はあまり無さそうです。現在のオーナーが定期的に様子を見に来ていらっしゃると聞き、安心しました。屋根なども所々修繕は必要ですがまだまだ活躍してもらえそうです!
母屋を出て正面にある植栽越しに堂々と聳えている「蔵」。
立派な様子にワクワクしながら中に入りました。格子状の木組みとベージュがかった土壁に囲まれ、静寂に包まれたこの空間は荘厳さも感じました。階段もあって2階にも行けます。
ここは単に収納場所だけではなく、何かうまい活用法がきっとあるような気がします。静けさを売りにできる、何かを。
蔵の外観として、残念ながら北側の一部の屋根が崩れていたり外壁の塗りが剥がれている箇所もあるので専門家に教えを乞いながらDIYしても楽しいかも知れません。
蔵の隣には井戸とかわいい小屋があります。小屋にはオーナーのお父様の趣味だった陶芸の名残りがそのままに。
ちなみにこの物件は売買物件として掲載をしていますが、賃貸物件としてのご提案も可能です(要相談)。とにかく、素敵なご縁繋ぎでこの物件を守っていきたい。
夕映えの蔵がやわらかなオレンジ色に照らされていた。
ふと振り返ると、向こうに見える富士の稜線。
暫し眺め、何もしない贅沢な時間を過ごす。